弘前大学は以前より網膜疾患の研究を行い世界に多くの新規知見を報告して参りました。基礎研究では、網膜色素変性のモデル動物を用いた病態の解明、治療法の開発、また、臨床研究でも多くの網膜疾患の患者さんのデータを解析し、疾患の特徴の評価、新しい疾患概念の提唱、最適な治療法の提案を行って参りました。
近年、眼科疾患に対する治療も飛躍的に進歩しました。とくに今まで治療法のなかった網膜色素変性をはじめとする遺伝性網膜疾患に対し、海外では遺伝子治療が承認されつつあり、今後は日本でも遺伝子治療ができる時代が来ると考えられます。今後は、弘前大学でも最新の治療が行えるように、遺伝性網膜疾患研究に注力します。そのためには、病因を特定するための遺伝子解析を進め、遺伝子治療を行うための治療手技の確立を目指します。
一方青森県では、残念ながら糖尿病網膜症による失明する患者が多いという事実があります。糖尿病網膜症は早期発見と早期の治療介入により多くの患者さんの目を救うことができますが、広い青森県ではなかなか医療にアクセスできないという事情もあります。このような青森県ならではのニーズを解決するために、遠隔医療や地域医療の効率化などの社会インフラの整備に関するような研究も行い、地域の皆様に貢献したいと考えております。